夜の公園でサム・ボー・ルオン——ベトナム人の夕涼み文化

ベトナムの夜の公園は別世界

日が落ちても、ベトナムの公園は静かにはならない。むしろ逆だ。

夕方になると家族連れ、カップル、おじいちゃんおばあちゃんのラジオ体操グループ、バドミントンを楽しむ若者たちが続々と集まってくる。気温が下がり始めると同時に、人々の熱気が上がっていく——そんな不思議な逆転現象がベトナムの夜の公園では起きる。

妻がそんな公園の夜を楽しんできた。場所はメコンデルタに位置するソクチャン省(Sóc Trăng)。手に持っていたのは、屋台で買った一杯の冷たいドリンク。

Sâm bổ lượng(サム・ボー・ルオン)とは

Sâm bổ lượng(サム・ボー・ルオン)は、ベトナムの公園や広場の屋台で定番の冷たいハーブドリンクだ。広東語の「蔘補涼(sam bo leung)」が語源で、中国系の伝統薬膳飲料がベトナムに根付いたもの。体に優しい滋養ドリンクとして長く親しまれている。

ソクチャンは中国系住民(華人)やクメール系住民が多く暮らすメコンデルタの街。広東語由来のこのドリンクが特に身近な存在として根付いているのも納得だ。

見た目はアンバー色の液体にさまざまな具材が浮かんでいる、チェー(Chè)に近い飲み物。コップの中には:

価格は10,000〜20,000ドン(約60〜120円)程度。屋台のおばちゃんが大きなプラスチックコップにどっさりと具材を盛り、その上からハーブ液を注いでくれる。

飲み方のコツ

ストローが2本入っているのがミソ。1本で液体を吸いながら、もう1本(太めのもの)で具材をすくって食べる。

最初は「飲み物なのか食べ物なのか」と戸惑うかもしれないが、慣れるとこの一体感がクセになる。甘すぎず、ハーブの風味がほんのりして、暑い夜に体に染みる。

公園の夜を楽しむ地元流

ベトナム人の夕涼みは「涼を取りながら外に出る」こと自体が目的だ。

公園のベンチに座って他愛もない話をしながら、LED照明に彩られた噴水や花壇を眺める。子どもたちはキックスクーターや自転車で走り回り、親たちはそれを見守りながらサム・ボー・ルオンを一口。

観光スポットに行かなくても、こういう夜の公園の一コマにこそ、ベトナムの日常が詰まっている気がする。


夜の公園でサム・ボー・ルオンを片手に、BGMは噴水の水音とバドミントンのラケット音。ベトナム暮らしの、ちょっとした幸せな時間だ。